アナ雪「Let it go」英語版と日本語版の違いをイメージで解説
こんにちは!英会話イメージリンク編集部の遠藤です。
以前 "let it go" というフレーズの意味について解説しました。 今回は「Let It Go」の歌詞について英語版と日本語版の違いを、イメージで解説してみたいと思います。
「Let It Go」は英語版と日本語版で違うものになっている?
生まれたときから周囲を凍らせ、雪を降らせることのできる特殊な能力をもつ女王エルサが、それを皆に知られてしまい、絶望のあまりにやけになって、山に閉じこもるというシーンである。それが日本語版では、「ありのままでいい」と振り切れたというような印象を与える。
(中略)
ありのままの自分で山にこもってもいい、自分らしく生きればいいのだというメッセージを与える日本語版に較べれば、心を閉ざしてひとりで生きてはいけないのだというメッセージを与える英語版は、メッセージとしては正反対だといえる。
(※強調は筆者によるもの)
この記事で英語版と日本語版でまったく違う物語になっていると指摘されています。しかし、記事を読んでも、いまいちピンとこなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それは英語版の歌詞をちゃんと捉えられていないからかもしれません。そういうわけで、英語版の歌詞をイメージで捉えてみましょう!
「Let it go」英語版をそのまま理解する
英語版の歌詞を、単語ごとにイメージと結びつけて描いていきます。
- The snow glows white On the mountain tonight
(参考)イメージをアニメーションで表すと次のようになります。
- Not a footprint to be seen
- A kingdom of isolation And it looks like I'm the Queen
- The wind is howling Like this swirling storm inside
- Couldn't keep it in
- Heaven knows I tried...
- Don't let them in. Don't let them see.
- Be the good girl you always have to be.
- Conceal, Don't feel, Don't let them know...
- Well, now they know!
- Let it go, let it go
- Can't hold it back anymore
- Let it go, let it go
- Turn away and slam the door!
- I don't care what they're going to say
- Let the storm rage on
- The cold never bothered me anyway
「Let it go」英語版と日本語版との違い
英語版のイメージがつかめましたか?でも、これだけでは日本語版との違いがわからないので、比較として日本語版のイメージと並べてみましょう。
英語 | 日本語 |
---|---|
比較していろんなことがわかると思いますが、英語版と日本語版との違いという観点では、英語では常に「it」(秘めた力)が出てきます。
この秘めた力を制御することをやめて、開き直った私(どうでもいいわ。寒さなんて私には関係なかったことだし)が表現されているわけです。
一方で、日本語では「ありのままの私」が出てきます。まわりの声に縛られない、着飾っていない本当の私が表現されているのです。
このように日本語と英語で違うことが表現されているわけですが、まったく別物かというと、そうではありません。
同じ絵を使っているわけなので、現実(映画のシーン)は同じです。その現実をどのように見ているのかの違いが、表現の違いとして表れているのです。
英語は「中心から周辺の順に物事を見ていく言語」で、日本語は「周辺から中心の順に物事を見ていく言語」です。
そのため英語版では中心にあるエルサの「秘めた力」に焦点があたります。一方で、日本語版では世間のうわさや中傷に対抗しての「ありのままの私」がメインになっているわけです。(この「世間のうわさや中傷」が周辺情報にあたるわけですが、周辺情報は前提として省略されることがよくあります)
※もちろん、オリジナルの英語版がネガティブなのに対して、日本語版翻訳がポジティブすぎるという指摘は確かにそのとおりだと思います。そのために、日本語版では劇中歌前後のストーリーのつながりが悪くなっています。
このように言語の違いは、そのまま「個人の内面重視の英語文化」と「集団の空気を読む日本文化」という文化の違いにつながっています。
そのため英語をそのまま日本語に翻訳しただけでは、私たち日本人にしっくりくるものにはなりません。アナ雪で翻訳を担当された高橋知伽江さんが日本人にあった世界観をうまく再構築したというわけで、エルサの口パクに合わせるという条件も加味すると、本当にプロフェッショナルな仕事をされたのだと私は思います。
英語と日本語における3つの大きな違い
さて、今回の「中心から周辺へ」「周辺から中心へ」という特徴を含めて、英語と日本語には次のような3つの大きな違いがあります。
- (1)英語「中心から周辺へ」、日本語「周辺から中心へ」
- (2)英語「真っ白なキャンバスに描く」、日本語「話し手の視界を前提とする」
- (3)英語「発信源から始める」、日本語「まず受ける」
「Let it go」の歌詞からそれぞれ該当箇所をピックアップして見てみましょう。
(1)英語「中心から周辺へ」、日本語「周辺から中心へ」
- 英語 The snow glows white on the mountain tonight.
- 日本語 今晩、山で雪がきらめいている。(直訳)
語順に番号をつけると上のイラストのようになります。英語の「中心から周辺へ」、日本語の「周辺から中心へ」という特徴がつかめるかと思います。
(2)英語「真っ白なキャンバスに描く」、日本語「話し手の視界を前提とする」
英語 | 日本語 |
---|---|
英語版と日本語版の比較イラストを見て頂くとわかるように、日本語版では圧倒的に表現されている言葉数が少なくなっています。
この理由は、日本語では話し手が見ているもの(話し手の視界)を前提としているためで、明らかに見えているものはわざわざ表現しないからです。
一方で、英語ではそういった誰かの視界を前提にしていなくて、あたかも真っ白なキャンバスに描いていくような感じなので、言いたいことはすべて表現する必要があります。これが英語で言葉数が増える理由です。
(3)英語「発信源から始める」、日本語「まず受ける」
- 英語 The cold never bothered me anyway.
- 日本語 少しも寒くないわ。
英語 | 日本語 |
---|---|
英語では原因となる「The cold」が発信源となります。つまり、The coldを主語にするというわけです。
一方で、日本語では「話し手視点」が前提にあり、話し手が「(何かの影響を受けて)リアクションをする」という形式をよく取ります。
この例文の場合は「何かの影響を受けて」の部分は「自らが作り出す寒さ(The cold)」であり、これはエルサ的には当然のものなので省略されています。(※日本語で言わなくてもわかることをわざわざ明示するときは、何らかの意図を含む場合です。)
最後に
「Let it go」の歌詞のイメージの違いから、日本語と英語における大きな特徴の違いを述べてきました。これらの特徴のより詳しい解説については、『英会話イメージトレース体得法』という書籍にまとめていますので、興味がある方はぜひどうぞ。
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※長々と講釈を述べてきましたが、やっぱり「Let It Go」は良い歌ですよね(^^)